マリーの部屋

人々の幸せを願うマリーが、投資、資産運用、キャリア、受験、子育て、金融について語ります。金融機関勤務25年超。東京大学経済学部卒。

マリーの部屋 ー お金のこと62 仕組債のヒミツ 元生産者から

みなさまごきげんよう。
お元気でお過ごしかしら。


仕組み債について、ご質問をいただくことがちらちらございますの。
ですから、ちょっとまとめて、ざっくりと、もと「仕組債生産者」として産地の事情をおしらせすることにいたします。


仕組み債=複雑
といわれます。
はい、とても複雑です。


なぜなら、「債券に、いろんなオプションやスワップを組み合わせているから」
ということに尽きるでしょう。


よのなかに、いろんなものを「組み合わせて」作っているものはたくさんあります。
機械系なんてぜんぶそうですわよね。
パソコンや、お洋服もそうでしょう。
素材や部品のお値段の合計+ブランド価値+人件費+儲け?=製品の値段
といったところでしょうか。


もうちょっと詳しく見ると、「組み合わせている部品」の値段を細かく調べれば、その製品の儲けというか、粗利みたいなものが見えるわけです。


でも、仕組み債券は違います。


日経225ノックイン他社株転換社債とか、デュアルカレンシー債とか、いろんな仕組み債券がございますが、上記の例と大きく違うのは


「組み合わせている部品が、売っていない」
ということになります。


売ってないので、いくら調べても、仕組み債にはいっている部品の原価はわかりません。


なぜ売っていないのか。値段がわからないのか。
理由はふたつにわかれます。
理由1 秘密だから
理由2 本当に値段がないから


理由1の主たるものは、「債券の発行体の資金調達コスト」になります。
つまり、仕組み債とはいえ債券として、発行体の資金調達を担っているわけで・・・その企業が、どれくらいの金利で世の中から資金調達できるかは、内部情報なのでわかりません。非公開です。


でも同程度の規模の同業種と比較すると、だいたいのイメージはわかります。


理由2については、仕組み債の中にはいっている、スワップやオプションの値段のことになります。そんな、部品、売っていないんです。


売っていないものを組み合わせる、というと混乱しますよね。
でも、仕組み債券を提供する証券会社等がやっているのは


「売っていない部品と同じような値動きがするものを見極める」


ということです。


わかりにくいですわよね。


例えば、すごく単純な例ですと、今のNTTの株価が3500円だとしましょう。
100万円の仕組み債券を購入して、その条件が、
ー半年後に100万円で償還
ー半年後にNTT株285株+2500円で償還
のどちらかで償還される仕組み債があるとしましょう。そのかわり、クーポンは普通よりも高くて、1.5%くらいつくとして。


償還がどっちになるかは、今の時点ではわかりません。


しくみとしては、ストライク3500円のNTT株の半年後執行プットオプションを、仕組み債券の買い手は売っています。
その売った代金をクーポンに載せているので、高い利回りになっています。


でね、この、ストライク3500円のNTT株半年後執行プットオプション、よのなかに売ってないですわ。


販売証券会社は、NTTの株をちょっと持つことによって、このオプションの値段の動きと同じ値動きのポジションを持つことができます。
NTT株の値段の水準によって、持ち高を変える、ということをしないといけないので、それなりに大変だけど。
でも、この「同じ値動きをする」ポジションを持つことにより、会社に損失を与えることなくこの商品(の中のオプション)を販売できるのです。


NTTの株をちょっと持って、このオプションの値動きをヘッジする、そのコストより、ずっとひくい金額だけを、クーポンとして上乗せしているので、証券会社は儲かるんです。


おわかりかしら。素人には、この「ヘッジするコスト」=「同じ値動きをする別のポジションを作るコスト」が全く、全然わからないので、儲け放題です。


金融庁はね、ここがわかっていないから、「仕組み債の収益を開示しろ」とかいうのよ。
仕組み債の部品は売ってないし、ヘッジの仕方も証券会社ごとに違うから、原価がまったくわからないはず。


でも、こう金融庁にいわれたら、適当な理屈を述べながら証券会社は勝手な理屈で、高めの原価を開示するでしょう。
「そんなもうけてませんよ」って。


そんなのはウソよ。
私、本当に仕組債の生産で儲けたもの。
グローバルで、トップセールスにもなったわ。


そう、仕組み債は、部品の値段が存在しない、組み合わせ金融商品。
むっちゃぼられているのは、100%確かです。


みなさま、本当に仕組み債だけは買わないで。
マリーの切なる願いだし、今後はそれをもっとわかりやすく説明することに、エネルギーを割こうと思っています。


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今週、ETFの業界団体の集まりがあったの。わたくしは、半年前のセミナーで(800人来場!)モデレーターをつとめたので、よんでいただいたわ。
おいしいごはんと、懐かしい仲間にもあえて嬉しかった。
ETFは仕組み債ではないけど、レバとインバースはデリバティブが入っているので、私は絶対におすすめしないし、買わないわ。

帝国ホテルのメインのツリーではないんだけど、かわいいかざり!


みなさま、いい師走の日々をお過ごしくださいね。
ごきげんよう。

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